研究概要 |
半導体技術の進展に伴い、通信機器に用いられるディジタル信号は現在数Gbps級から10Gbps級に及び、このためのテストシステムを試作する段階まで達している。その中にあっても金属を伝送媒体とした導波系は、製造における経済性と精密さとの観点から、また光-電気信号の変換システムを必要としないという便利さから,近い将来マイクロ波から数十Gbps級のミリ波領域が開拓されても活躍の場を失わないと確信される。本研究はその実現のために,このクラスの信号伝送に付随する種々の問題点を解決する要素技術を開発し、また電磁界的解析手法と回路理論に基づく解析法とを統合した精密なシミュレーション技術を構築して、現実の様々な導波系に応用しようとするものである。シミュレーション技術としては,積分方程式法、モード整合法、等価波源法などを改良した。また、これらを利用して、次の問題に取り組んだ。(1)高品質の導波素子やアンテナ系の解析・設計・試作・評価。具体的には平行平板電波レンズ、同軸線路、アイソレータ、円偏波発生器、金属回折格子、誘電体回折格子。(2)ディジタル信号の不要ノイズを除去するための重要な材料であるピラミッド形電波吸収体の特性把握。(3)高周波における問題点のひとつである金属の表面粗さによる導体損の把握。(4)地中埋設物の探査問題などの信号処理アルゴリズムへの組み込み。 科学研究費の交付期間の間に、設計用のシステムを構築するためのルーチンの基礎がほぼ確立された。以上により,伝送系の設計から実装に至るまでのプロセスが統合化され、従来に比べて時間的・経済的コストを大幅に省略することが可能となった。今後はこのシステムの対象範囲と機能を拡充し、解析法と設計法の改良を図ることは容易である。
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