ジョセフソン効果は非線形な現象であり、超伝導体を使って作られたジョセフソン接合はこれまで高感度電磁波検出器やSQUIDに応用されてきた。 一方、5個のジョセフソン接合から出来たジョセフソン・テトロードは独立変数を3個持ち、非線形効果を利用してカオスを発生させることができる。レーザーを用いてカオスを生成する場合、数GHz〜数10GHzが限界であるが、ジョセフソン効果を応用しているので、容易に数100GHz〜数THzの超高速カオスを生成できる。光通信のサブキャリアに利用できれば、波長多重技術を利用しなくても、1個の半導体レーザーのみで、従来のディジタル光通信数100チャネル分の大容量高秘匿通信(アナログ)が実現できる。 本研究の平成15年度の目的は、ジョセフソン・テトロードのカオスジェネレータとしての特性を詳細に解析することにある。そこで、このデバイスの等価回路表現及び回路方程式を導出し、特性方程式(連立常微分方程式)を誘導した。 カオスの発生条件は、(1)分岐図、(2)時間波形及びFFT、(3)アトラクタ、(4)最大リアプノフ数を調べることによって明らかにできる。まず、ジョセフソン・テトロードの満足する連立常微分方程式を数値解析法によって解き、時間波形及びFFTを作成した。次に1個のパラメータを変化させて分岐図を作成し、カオス発生条件の大略を明らかにした。 次にアトラクタを調べ、カオス現象に固有なストレンジアトラクタが得られる条件を解析した。ただし、アトラクタがカオスアトラクタであるか否かは最大リアプノフ数を解析しなければ完全には解析できないことから、特性方程式からヤコビアンを誘導し、ジョセフソン・テトロードの動作を特徴付ける固有値を決定する3次方程式を導出した。得られた3次方程式をカルダノ法によって解析し、ジョセフソン・テトロードの最大リアプノフ数のスペクトルを詳細に調べることができた。その結果、分岐図からカオスを発生できると判断できるような条件下では、最大リアプノフ数は所々負の値を取り得るものの、ある程度の範囲で平均化すると正の値を取ることが明らかになった。 以上のことから、ジョセフソン・テトロードはカオス発生用超伝導デバイスであることを理論的に実証することができた。
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