通信路特性を予め知ることなく符号化・復号化が行なえ、かつ符号長を長くしたときの復号誤り率が、その通信路における最適な符号と同程度であるような符号のことを「ユニバーサル(万能)符号」と呼ぶ。本研究では、従来から用いられていたBCH符号や最近随所で研究されているLDPC(低密度ハリティ検査)符号などを符号器として用い、これらの符号を通信路特性を利用しないユニバーサル復号器によって復号したときに得られる復号誤り確率の限界式を求め、ユニバーサル復号器の性能評価を行うことを目的とし、本年度は以下の成果を得た。 1.ユニバーサル復号アルゴリズムの性能解析 多元加法的通信路に対して、与えられた線形符号をユニバーサル復号法の一つである最小エントロピー復号法によって復号した際の誤り率の上界式を明らかし、最小エントロピー復号法の性能解析を行った。得られた上界式によれば、与えられた線形符号の復号誤り率の上界とランダム符号化によって得られる復号誤り率との比が、与えられた符号の完全重みによって定まることを示している。 2 計算量の少ないユニバーサル復号アルゴリズムの提案 多元加法的通信路に対して適用可能な多段階符号化法と多段階ユニバーサル復号法を新たに提案し、最小エントロピー復号法と比べて飛躍的に少ない計算量でユニバーサル復号が実現されることを明らかにした。次に、提案する多段階符号化において各段階の符号として従来の2元誤り訂正符号であるBCH符号やLDPC符号を用い、多段階ユニバーサル復号法にて復号したときに得られる誤り率の上界式を明らかにした。更に、提案法は多元加法的通信路の通信路容量を達成する符号化/復号化法であることを示した。
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