Gbpsといった超高速ネットワークを占有して、大容量のデータ転送を行うことを想定した新たなTCP輻輳制御方式についての研究である。本年度は最終年度として下記の研究を実施した。 1.昨年度作成した輻輳制御シミュレーションプログラムによる評価 昨年度アルゴリズムの設計とシミュレーションプログラムの開発を行ったが、それに基づいてまず評価を行った。その結果、少数の高速TCP通信がネットワーク輻輳を生じさせる場合においても、通常のTCPに比べて2倍程度のスループットが得られるという結果を得た。しかし、1つのTCPコネクション内のサブコネクションの数を増やすと、逆にスループットが低下するという結果になった。 この原因を解析したところ、輻輳により損失したパケットの再送を、最初の送信時とは別のサブコネクションにおいて行ったため、積極的にデータを送信するような制御となり、より輻輳を助長したことが原因であると予想された。 2.アルゴリズムの改良とシミュレーションプログラムの開発評価 上記の結果を踏まえ、輻輳によるパケット損失が生じた場合、再送はもとのサブコネクションを用いて行い、従って1つのサブコネクションで紛失したパケットは、同時には1つのみが再送可能となるようにアルゴリズムを変更し、そのシミュレーションを開発した。 そのプログラムを用いて評価したところ、輻輳の程度は軽減されたものの、スループットの向上の度合いは前のアルゴリズムとほぼ同等であった。 3.新アルゴリズムの検討 以上の結果を踏まえ、よりスループットの向上を図るために、コネクション全体でより大きなウィンドウを持ち、サブコネクション単位に通常のウィンドウと輻輳ウィンドウを持つという、三段階のウィンドウを管理するアルゴリズムを考案した。
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