超高速マルチサービスIP網における通信サービス品質制御法に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15560328
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 滝根 哲哉 京都大学, 情報学研究科, 助教授 (00216821)
• キーワード: 最関連時間スケール / 局所ポワソン性 / パケット損率 / IPトラヒックモデリング / マルコフ型到着流 / 周期的クラスタ到着

研究概要

フロー集約されたIPトラヒックは時間スケールによって異なる性質を持つことが知られている。すなわち、比較的短い時間スケールではランダムな特性を示し、.比較的長い時間スケールでは長期依存性といった長期に渡って継続する強い相関を示す。フロー集約されたIPトラヒックにおける比較的短い時間スケールで発現するランダムさを表現するために、局所ポワソン性という考え方を導入し、短い時間スケールでランダム性が発現するメカニズムを明らかにした。続いて、発生バイト数の分散時間関数を用いて、パケット損率に最も影響を持つ最関連時間スケールを求める一般的手法を開発し、この手法に基づいてパケット損率が局所ポワソン性によって定まるようなシステムパラメタの領域を同定する近似的手法を確立した。なお、この業績は電子情報通信学会より論文賞が授与されることが内定している。一方、局所ポワソン性がパケット損率を支配するパラメタ領域の外側では、長期に渡る相関がパケット損率に大きな影響を及ぼすが、このようなパラメタ領域におけるパケット損率評価のための、測定データから解析的に取り扱いが可能な入力モデルの構築手法に関して提案を行った。これに関しては、引き続き検討を行う。さらに、多元流を収容するトラヒックモデルの解析手法に関しては、集団到着を許すマルコフ型到着過程をもつ先着順単一サーバ待ち行列においてサービス中断がある場合のアルゴリズム的解法を確立した。これにより、優先パケットが存在するような状況下での、非優先パケットの性能を評価することが可能となる。加えて、周期的なクラスタ到着を収容する単一サーバ待ち行列の解析を行い、客数分布や遅延分布の陽表現を得ることに成功した。この結果はVoIP網、あるいは音声パケットが優先パケットとして扱われるIP網の性能評価に直接応用可能である。

研究成果

• [文献書誌] H.Masuyama, T.Takine: "Sojourn Time Distribution in a MAP/M/1 Processor-Sharing Queue"Operations Research Letters. 31・5. 406-412 (2003)
• [文献書誌] H.Masuyama, T.Takine: "Analysis and Computation of the Joint Queue Length Distribution in a FIFO Single-Server Queue with Multiple Batch Markovian Arrival Streams"Stochastic Models. 19・3. 349-381 (2003)
• [文献書誌] O.J.Boxma, T.takine: "The M/G/1 FIFO Queue with Several Customer Classes"Queueing Systems. 45・3. 185-189 (2003)
• [文献書誌] D.Inoue, T.Takine: "Sojourn Time in a Queue with Clustered Periodic Arrivals"Journal of the Operations Research Society of Japan. 46・2. 220-241 (2003)
• [文献書誌] H.Furuya, H.Nakamura, S.Nomoto, T.Takine: "Local Poisson Property of Aggregated IP Traffic"IEICE Transactions on Communications. E86-B・8. 2268-2276 (2003)
• [文献書誌] H.Masuyama, T.Takine: "Stationary Queue Length in a FIFO Single-Server Queue with Service Interruptions and Multiple Batch Markovian Arrival Streams"Journal of the Operations Research Society of Japan. 46・3. 319-341 (2003)