研究概要 |
ACバイアス記録を必要としない2つの残留磁化のみを利用する2値記録でありながら信号処理上は3値記録と等価な効果が得られる擬似3値記録を、トラック面に垂直な2つの磁化方向により2値記録する垂直磁気記録に適用することにより高密度記録を図ることを目的として検討を行った。まず,擬似3値記録のための記録符号としてグレイ符号を適用した3B-2T符号を採用し、擬似3値記録のためのPRML方式としてPR1ML、PR2ML、EPR3ML、E^2PR3ML、EPR4ML及びE^2PR4ML方式について検討した。次いで,記録再生系モデルとして,磁気クラスタサイズによる磁化遷点の変動や高密度記録時に隣接する磁化遷移の交差によって生じるパーコレーションと呼ばれる磁化遷移の消失を考慮したマイクロトラックモデルを構成した。これを用いて,擬似3値記録における読み出し点の信号及び雑音特性,識別点における雑音電力スペクトル,誤り率特性を求め,2値記録の場合と比較検討を行った. その結果,識別点雑音電力スペクトルから,高記録密度領域においては擬似3値記録は2値記録に比べて高域信号成分の減少が少なく,波形等化による高域雑音電力の増加を抑えることができることが明らかとなった.また,トラック幅が100mm、孤立再生波形の半値幅が28nmの場合について計算機シミュレーションにより誤り率特性を求めたところ,平均クラスタサイズが5mm以上の場合には上記のPR1ML方式のうちでは、PRML方式とEPR4ML方式が、平均クラスタサイズが4mm以下ではPR2ML方式とE^2PR4ML方式が高記録密度を達成できることが明らかとなった。更に、後者の場合擬似3値記録によるPR2M方式が2値記録で最も良好な特性を示すPR2ML方式に比べてより高記録密度を達成できることが明らかとなった。
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