研究概要 |
直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing : OFDM)方式は,ピーク電力対平均電力比(Peak to Average Power Ratio : PAPR)が単一キャリア伝送方式のPAPRに比べ非常に大きく,非線形増幅器を通過すると誤り率特性が著しく劣化する.同問題に対処するため,先に筆者らはPAPRを抑圧するための位相回転量決定問題を組合せ最適化問題として捉え,ホップフィールドニューラルネットワーク(Hopfield Neural Network : HNN)およびカオスニューラルネットワーク(Chaotic Neural Network : CNN)を用いたアルゴリズムを提案した.しかしながら,同手法では送・受信装置の小規模化が不可能であることから,本研究では各サブキャリア信号に位相回転を施すのではなく,幾つかのサブキャリア信号からなるブロック信号に位相回転を施すと共に,各ブロック信号に対する位相回転量をPAPRが最小となるように,HNNおよびCNNより決定する新たなアルゴリズムを展開した.また,シグナルマスタ装置を動作させ,同装置の基本的動作等の確認を行うと共に,HNNおよびCNNを用いたブロックSLM法によるPAPR抑圧システムの回路化を実現した.なお,回路規模縮小化のために,システム内のニューロン動作の非同期化およびニューロン出力のバイナリ化等についても検討した. 一方,OFDM信号の誤り率特性はPAPRのみならず,端末局移動に伴うドップラ周波数の影響によるキャリア間の直交性の崩れ,すなわち,キャリア間干渉(Inter Carrier Interference : ICI)にも著しく影響される.この点にも注目し,ドップラ周波数の影響を取り除く等化器を構築すると共に,PAPRおよびICIの両問題を解決することによりOFDM方式の伝送特性の改善を図った.なお,提案システムの有効性について計算機シミュレーションにより検証した.
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