初年度に続き次の二つの領域について検討を進めた。 (1)品質満足完了率に基づくふくそう制御手法の検討 VoIP(IP網上での音声双方向通信)を想定すると、呼接続完了後も、その呼が終了するまで通話品質が変動する。呼接続と共に通話品質を保証するためには、CAC(呼受付制御)の導入と接続ルートの通話中固定化が必要となる。また、網内の不確定なトラヒック変動を吸収するためには迂回ルーティングの導入が望まれる。しかし、(1)品質保証をおこなうCACとルートの固定化はゲートウエーノードの処理負荷を増大させ、また、(2)無秩序な迂回拡大は網の不安定化を招く、ことが知られている。本年度は、MPLSラベル割り当て管理を行う品質資源センタと昨年度提案した品質資源留保方式による迂回ルーテイングを組み合わせることにより、上記(1)(2)を解消する制御方式を提案し、その基本アルゴリズムを確立した。 (2)サービス選択行動を意識した通信品質向上に向けた検討 CDMAセルラー網においてはチャネル資源の有効利用の観点からセル半径を小さくするマイクロセル化が進みつつあるが、移動ユーザから観るとハンドオーバー時のチャネル切断(通話断、セッション断)の可能性が増加することになる。ユーザが高接続品質サービスを選択し申告する形態のもとで、移動時の安定な通信を強く希望するユーザに対して、ユーザ満足度の的確な向上の図れる方式を提案してきた。提案した制御方式に関して、本年度は、具体的な地域(東京渋谷駅周辺)のユーザ移動行動をモチーフとしてシミュレーションによる性能評価を行い、選択的に特定ユーザの品質と満足度の向上を効率よく(回線稼働率を下げることなく)実現できることを示した。
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