研究概要 |
差別化サービスでは,品質に関して複数クラスのサービスが提供される.したがって,その料金をいかに設定するかによってネットワーク内のトラヒック量が変化し,ネットワーク利用は大きく異なってくる.それは,ネットワーク事業者の収入とともに,顧客満足度などのユーザ効用にも直接結び付く. 一般に,料金を設定する場合,サービスクラスごとに料金に差を設け,ユーザの満足度の大きいサービス,すなわち,ユーザ効用の大きなサービスに対しては低いサービスよりも料金を高く設定することが考えられる.品質と料金に差を設けることにより,ユーザは自身の利得が最大となるような行動を選択する.このユーザ行動を利用することにより,効率的なネットワーク資源の活用が可能となる. ユーザの選択行動をモデル化するためには,品質に対する満足度や,支払意思額のような限界効用との関係を明らかにすることが重要である.このような,ユーザ効用に着目した課金問題に関する研究として,非集計行動モデルを用いた検討がある.しかしながら,現在,差別化サービスはまだ提供されておらず,ユーザ行動を示すデータを集めることは困難である.この問題を解決する方法として,支払意思額を用いて仮想のサービスにおける代替案に対する選好の意思表示データを得る方法がある. そこで本年度は,昨年度明らかにした支払意思額と品質の関係を用いて,帯域保証・ベストエフォートの差別化サービスにおける収入最大化のための最適料金について検討した.すなわち,非集計行動モデルをユーザの帯域選択行動に適用し,ユーザの利得やサービスへの参加確率,ネットワーク事業者の収入などをシミュレーションにより評価した.
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