研究概要 |
DiffServで優先・非優先の二つのクラスが提供されることを前提として,コンテンツ配信サービスの料金について検討を行った.二つのクラスの使い方としては,三つのモデルを想定した.すなわち,優先・非優先ともストリーミングのS-S配信モデル,優先がストリーミングで非優先がダウンロードのS-D配信モデル,優先・非優先ともダウンロードのD-D配信モデルの三つである.配信するコンテンツはいずれも同じ映像である.例えば,S-D配信モデルでは,優先クラスのユーザはストリーミングで映像を鑑賞することができるが,非優先クラスのユーザはそれをダウンロードしてから鑑賞する. このようなモデルにおいて,利用料金や最低保証帯域幅などの条件を変化させた場合の事業者収入とユーザ全体の便益という事業者・ユーザの双方の視点から最適条件を検討した.また,その際にユーザの行動モデルや便益を定義するために,利用可能帯域幅や待ち時間に対するユーザの支払意思額関数を用いた. その結果,配信モデルや単位時間当たりのリクエスト数の違いにより事業者収入・ユーザ全体の便益の変化の傾向が異なることが分かった.すべてのモデルにおいて,事業者収入とユーザ全体の便益を共に最大にする理想的な状態は存在せず,一方の値が増加すれば,もう一方の値は減少するというトレードオフの関係にあることがほとんどである.これでは,最低保証帯域幅や料金をどのように設定すべきか明らかでないので,ゲーム理論の交渉問題を用いてそれぞれのモデルにおける妥結点を求めた.その結果,妥結点の最低保証帯域幅は,優先クラスにおいてストリーミングで配信する場合は比較的小さく,優先クラスにおいてダウンロードで配信する場合は比較的大きいことが分かった.
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