通常の通信方式では、まずトレーニング信号などを使って伝送路伝達関数の推定を行い、その推定に基づいた等価器を使って伝送路による歪みを補正し、送信された信号を推定する。最近、トレーニング信号を使わずに、送信信号のみから伝送路伝達関数の推定を行うブラインド等化方式の研究が盛んになってきた。この研究では、等化器の処理を省き、送信信号を直接推定する効率的なブラインド通信方式を提供することを目的としている。 平成15年度では以下のような事柄を主に行った。 (a)ブラインド推定の理論的根拠を明確に示し、さらにその推定が効率的に行われるようなアルゴリズムを提案した。 (b)伝送路に加算雑音がないと仮定して、提案するブラインド推定の方法で解が得られるとき、通信システムは同定可能であると呼ぶことにする。どのような送信信号や伝達関数のときに、同定が可能なのかの条件を求めた。言い換えれば、どのような送信信号や伝達関数のときには同定できないのかを求めた。このような同定可能条件を解析し、また他の推定法に於ける同定可能条件との比較検討も行った。 (c)ブラインド推定にはすでに多くの手法が提案されていて、それに関連する文献も非常に多く発表されている。それらのサーベイを行い、今回提案する方法の位置づけを明確にした。さらに、計算効率の比較も行った。また、ここで提案する手法が未だ発表されていないことを確認した。
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