本年度の研究実績は以下の通りである。 (1)屋内伝搬モデルの屋内無線LAN環境伝搬特性の測定と屋内無線LAN環境シミュレータの基礎検討 既設の超高遅延時間分解能0.5ns(伝搬通路差15cmに相当)を有する遅延プロフィール測定装置(搬送波周波数7GHz)を用いて、屋内無線LAN環境における伝搬特性測定を実施し、各多重到来波の伝搬特性を解析した。基礎検討を実施している到来方向測定機能をほぼ完成させることができたが、測定精度に若干の問題があり継続的に検討している。しかし屋内伝搬構造の詳細な検討には十分であり、測定結果からは遅延発生原因が屋内の金属などの反射損失の少ない物体が主たるもので、レイトレースなどで予測されるほどの幾何光学的反射波はむしろ少なく、散乱波が非常に多く観測されることが明らかとなった。当初予定していた素波の性質はまだ十分に検討できていないが、今後検討する予定である。また、測定結果を基に屋内無線LAN環境シミュレータの基礎検討を進めている。 (2)ギガビット伝送方式を実現する変復調方式の基礎検討 これまで検討してきた適応伝送速度OFDM伝送方式について変調多値数と周波数ダイバシチブランチ数を伝送条件に対して適応に調整する方式、簡易な伝送路推定に基づきガードインターバルを変化させる方式、消費電力低減を狙った固定変調方式と符号合成周波数ダイバシチ組合せた方式などを検討した。また、符号合成方式を組合せることで伝送路推定を省略できるMIMO伝送方式を提案し、検討した。更にターボ符号を符号合成ダイバシチと組み合わせた方式の基礎検討を行った。これらの検討には今後(1)で構築する結果を基に実測伝送路特性を利用して検討したい。
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