本研究では、現状の電子透かしシステムがロバスト性(耐性)をもたない画像処理や攻撃、及び今後の新たな画像処理や攻撃に対しては、電子透かし検出部を適応的に補正することで透かし情報の検出精度を上げるという立場で、ロバストな電子透かしシステムの設計について議論する。今年度は、画像と映像を対象にして、電子透かしシステム、画像処理及び攻撃のモデリングを中心に基礎的研究を行った。今年度の研究成果は以下通り。 1.ウェーブレット変換を用いた電子透かし埋め込み/検出システムの解析を行い、透かし入り画像の品質と画像処理に対する電子透かしの耐性の観点から、電子透かしで用いられるウェーブレットフィルタバンクの評価を行った。 2.電子透かしシスチムのモデルを透かし情報の入出力関係に注目して構築し、画像処理や攻撃によって「透かし情報がどのように歪むのか?」、「透かし情報の検出誤りがなぜ起きるのか?」を明確にした。その結果に基づいて、ベイズの決定法に基づく電子透かしの検出方法を提案した。 3.スクリーンに投影された映像をデジタルビデオで撮影することによって、映像がどのように変化し歪むのか実験を行った。その結果に基づいて、スクリーンの撮影に対してロバストな動画像向け電子透かし方式の提案を行った。 4.上記2の結果より、電子透かし検出システムの補正問題がデコンボリューション問題に帰着されることが示されたので、デコンボリューション問題の解決方法を調査した。特に、情報伝送や画像処理の分野で現れるブラインドデコンボリューション問題のEM(Expectation-Maximization)アルゴリズムによる解決方法を調査した。
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