研究概要 |
本年度は簡単な場合における定式化と信号処理への応用を行った。複数のパラユニタリフィルタバンク(FB)が与えられているとする。ここでは、Nチャンネルの最大間引き型を仮定するために、ポリフェイズの意味でNサンプルのブロック信号が単位時間間隔で出力されると考えてよい。複数のFBはこのブロック信号をそれぞれ出力し、その中からある評価基準によって一つのブロック信号を選ぶ。したがって、入力信号と出力信号のサンプル総数は変わらない。再構成側では、この出力されたブロック信号によって、原信号を再構成する。以上の問題を定式化する。いま二つのパラユニタリFBが与えられており、これらの行列表現をE1およびE2とする。入力画像をfとすると、g1=E1f,g2=E2fによって各FBの出力が得られる。g1,g2はブロック信号が直列に配置されている列ベクトルである。このとき上記の選択操作は、正射影P1,P2(P1+P2=I)を用いてg=P1g1+P2g2と表すことができる。このgが、再構成側で得られている信号となる。つぎにgから原信号fを求める方法は次のようになる。E1,E2の共役作用素をE1^★,E2^★とする。そうすると、ユニタリ性により E1^★P1E1,E2^★P2E1はそれぞれ正射影となる。したがって、それぞれの正射影は部分空間H1,H2を定義することになり、C1=g1+H1⊥,C2=g2+H2⊥(H1⊥,H2⊥はH1,H2の直交補空間)は線形多様体をなす。線形多様体は凸集合であることから、それぞれの線形多様体への射影を交互に繰り返すことによって、C1∩C2={o}であれば原信号fを復元できる。つまり、凸射影の繰り返しによってfが求まる。以上のことを理論的に明らかにした。画像符号化と雑音除去への応用実験を行った。
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