研究概要 |
人間と計算機あるいは計算機相互の効果的なインタラクションの枠組みに関する検討結果(前年度)を踏まえ,創発的問題解決の方法論の構築について検討した.特に,今年度は(1)創発的方法論の核となる計算アルゴリズムの再構成,ならびに(2)種々の事例への応用を通じた方法論の評価・検証をテーマとして研究を進めた. まず,(1)について,自律分散型階層モデルを基礎とし,サブモデル間でのインタラクションを考慮したシミュレーション・モデルおよび意思決定モデルを構築した.意思決定のメカニズムとしては,機械学習の一つである遺伝的機械学習に注目し,インタラクションを内包したシミュレーションをベースとして,適応的に意思決定ルールを調整・獲得する枠組みを再構成した.この際,ルールの構造(特に前件部)設計に不可欠となる対象システムの状態認識法に関して,事前のシミュレーションによって状態空間を自己組織的に分割しておくといった方法を検討・実現した. (2)については,上記(1)の枠組み・方法論を,まず生産システムにおける計画問題・スケジューリング問題に対するリアクテイブな意思決定モデルとして実現・具体化し,二種類の事例への適用を通して,その有用性を確認した.さらに,前年度と同様,高速道路交通シミュレーションを対象とし,運転者と車両,道路をそれぞれ個別にモデル化した上で,これらのサブモデル間でのインタラクションを考慮したシミュレーション・モデルおよび意思決定モデルを構築した.これより,道路交通において典型的でかつ複雑な挙動が,事前の作り込み無しで発現されることまでは確認できている.今後は,渋滞緩和等に効果的なドライバの意思決定について検討を進めていく予定である.なお,エレベータ群管理システムおよび家庭用コジェネレーション・システムに対しても,創発的アプローチの展開を進めているところである.
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