研究概要 |
計算機シミュレーションに基づく弾性表面波(SAW : Surface Acoustic Wave)デバイスの最適設計においては,SAWデバイスの等価回路モデルの精度が問題となる.すなわち,SAWデバイスのモデル化誤差の影響を考慮していなければ,最適化手法を駆使して最適なSAWデバイスの構造を求めても,製造段階で設計の修正や変更が必要となる.現在,SAWデバイスの等価回路モデルは幾つか提案されているが,理論と実験のみから各モデルに含まれるパラメータの値を特定し,対象とするSAWデバイスの厳密なモデルを構築することは困難である. 本年度の研究では,SAWデバイスの基本的な構成要素である櫛形電極(IDT : Interdigital Transducer)に着目し,IDTの等価回路モデルの特性を左右する3つのパラメータ,すなわち,不連続係数,移相サセプタンス,速度比のバラツキに対するSAWデバイスの周波数特性のロバスト性ついて検討を行った. まず,上記の3つのパラメータ値は,圧電体基板の材質や周波数などに依存し,実験値との比較から厳密に求めることは容易でない.そこで,各パラメータのノミナル値と上下限値を規定し,その区間内におけるパラメータのバラツキを考慮したSAWデバイスのロバスト最適設計問題を制約条件付き最適化問題として定式化した. つぎに,ペナルティ関数法と可変近傍探索法を組み合わせた最適化手法を考案し,代表的なSAWデバイスである共振器型SAWフィルタのロバスト最適設計問題に適用してその有効性を確認した.本研究で考案したSAWデバイスのロバスト最適設計手法は,SAWデバイスのモデル化誤差のみならず,IDTの電極膜厚のバラツキなど加工精度に対する周波数特性のロバスト性についても同様に保証することが可能である.
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