人間のような柔らかな処理をコンピュータ上に実現することを目指し、知識の不完全性を許容する推論法およびそれに利用する常識知識の獲得・知識ベース化について研究した。 前者については、不足知識を類似知識や常識知識で補い概略解を得る推論法(ARSK)の改良およびその推論における新たな知識表現形式(WPL)の提案を行った。WPLは、既存の自然言語処理ツールを用い自然言語文から自動変換することを想定した、言葉ベースの拡張型-階述語論理であり、単文、複文に関わらず一つの文を一つの素式で表現することを特徴とする。推論では、WPLで表現された知識を順序ソート論理の枠組みを用いて処理するが、本研究では複合概念からなるソートの内部構造まで立ち入って処理できるようこの枠組みを拡張した。本推論法については、その健全性・完全性の証明、推論エンジンの具体化と有効性の確認等の課題が残されており、今後さらに研究を継続する必要がある。 後者については、主にこれまで構築を進めてきた国語辞書をもととした概念ベースの評価およびその体系化を行った。評価は、言葉の意味の類似性判別能力に関して、考案した評価法による機械的評価および人間の感覚による主観的評価により行い、いずれにおいても平均的には一般的なシソーラス以上の性能が得られることを確認した。また、複合語、造語、表記揺れ等の問題を解決し、基本的にはあらゆる概念に対応可能な類似度算出ツールとして体系化を図った。さらに、国語辞書の語義文上の特徴を利用した事実知識獲得法、接続詞の意味的特徴を利用した因果知識獲得法について研究した。
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