研究概要 |
(1)環境酸素濃度変化に対する嘴打ち前後のニワトリ胚における心拍リズムの応答。 鳥類の胚は絨毛尿膜を嘴で破り(内嘴打ち、IP)、更に卵殻を破って(外嘴打ち、EP)孵化する。IPまでは絨毛尿膜による拡散性のガス交換が行われ、IP、EP中に肺呼吸に変わって行く。この肺呼吸が加わる嘴打ち中に酸素摂取量は大きく増え、体温調節能は孵化を境に大きく亢進する。そこで、呼吸形態が切り替わる嘴打ち前及び嘴打ち中に環境の酸素濃度を変化させ、低酸素(10%O_2/90%N_2)と高酸素(100%O_2)環境における胚の心拍リズム(心拍ゆらぎと心拍数ベースライン)応答を明らかにした。 (2)孵化直後の雛における瞬時心拍数と呼吸リズムの同時計測。 ニワトリにおいて、EP中の胚の瞬時心拍数には周期が約1秒の心拍振動があり、長期の記録には心拍数が約10bpmから50bpmの幅広いベースラインとして現れ、その周期の値から呼吸性不整脈ではないかと推察されている。雛に孵化すると特徴的な瞬時心拍ゆらぎはType I, II及びIIIとして3つのパターンに分類されており、Type I心拍ゆらぎは周期が約0.7秒の心拍振動で、EP胚に見られる呼吸性不整脈ではないかと報告されている。そこで雛の瞬時心拍数と呼吸運動を同時計測し、Type I心拍振動が呼吸性不整脈であることを立証した。 (3)エミュー雛の瞬時心拍数低温暴露応答。 ニワトリにおいては、体温調節能は孵化中に大きく発達する。孵化後の雛を350℃環境から250℃環境に暴露すると、心拍数ベースラインは孵化直後には環境温度変化に並行する応答を示し、時間と共に環境温度変化に逆らう体温調節性の応答となる。体表面/体積比がニワトリより小さい大型の鳥類であるエミューにおいて、瞬時心拍数の低温(10℃の環境温度低下を補助金による備品、恒温恒湿器で実現した)暴露に対する応答を北テキサス大学及び室蘭工業大学で測定して、ニワトリより体温調節性の心拍数調節がより大きいことを窺わせる結果を得て、今後の研究の示唆となる知見を得た。
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