研究概要 |
直流磁界型高精度ワイヤレス微小温度センサは,感温フェライト膜を測温素子とすることにより,測定対象の温度変化を磁気特性の変化として,原理的に非接触で読み出すことが可能なセンサであり,事実上自己加熱が無視できるという優れた特徴を有する. 以下に,本年度の研究状況を研究実施計画に基づいて報告する. ■センサの最適化 外部磁界の影響を受けにくいセンサ構造をシミュレーションおよび信号処理技術により検討した.磁界解析ソフトウェアを用いて,測温素子である感温フェライト膜と磁気読み出し素子(MI素子)および磁路となるヨークの構造に関して配置と形状を種々検討したところ,最適解ではないがおよその傾向をつかむことができた.また,信号処理部分にマイコンを用い外部磁界によるノイズの除去をリアルタイムに行える装置を試作した. また,測温素子である感温フェライト膜と磁気読みだし装置との非接触達成距離に関しては目標値である5mm近傍(S/N比を考慮すると現状は4mm程度)が達成できた. ■測温素子の温度特性の制御 磁気バイアスによる感温フェライト膜の磁気の温度特性の制御法をシミュレーションにより検討した.シミュレーションによりある程度は制御できるが,広範囲には利用できないことを確認した. 応力を印加した場合の感温フェライト膜の磁気の温度特性への影響を計測する装置を試作した.現在,試作装置にて印加応力と磁気特性の関係を測定ならびに理論解析を進めている. ■調査および研究成果の発表 応用物理学会等の講演会,および研究代表者が幹事を務める電気学会調査専門委員会等で磁性体を利用したセンサや微小温度計測技術に関して調査および発表を行った.また,研究成果の一部をJournal of Magnetism and Magnetic Materials(オランダ,Elsevier Science社刊行,磁気と磁性材料に関する学術論文誌)に発表した.
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