研究課題
基盤研究(C)
本研究では、非同心型円環アレイによる音源を構築することによって、無回折で伝搬する超音波ビームの形成を行ない、さらに、その放射方向を可制御とすることを目的としている。まず、隣り合う要素間に空隙が存在する円環アレイに対して偏心を施すことによって、ビーム放射方向を変化させることが可能となることを確認した。数値解析により、アレイ要素数10の場合では、最大で約15度、音軸からずれた方向に、細い幅を保ったビームが放射可能であることが示された。また、アレイ要素数が少数の場合においても、音軸からずれた方向に、幅の細いビームが放射可能であることが示された。また、各要素における偏心率を変動させた場合に及ぼされる影響についても検証を行ない、実際に偏心される要素と、ビームの方向がずれる音源平面からの垂直距離との間の関連が見出された。引き続き、効果的にビーム放射方向を変化させることが可能となる音源要素の配置について検討を実施し、偏心要素数を最小限にした場合においても、無回折で伝搬するビームの放射方向が可変であることが確認されるとともに、ビームの精密な平行走査法としての可能性が新たに見出された。また、放射されるビームの伝搬経路をより細やかに設定する手法を検討し、空間中でねじれた伝搬経路を持つ放射ビームを得る手法を見出した。さらに、測定実験を行うための手段として、音源によって形成される音場を測定する手法についても、並行して検討を実施し、2種の干渉計を用いた光学的な手法に基づく、音場に対して非接触・非侵襲な測定装置を構築した。一般的な音源を用いた測定実験を実施し、放射音場の二次元複素分布の可視化において、数値的解析とよく一致した傾向を持った測定結果を得ることに成功した。
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