今年度の研究・計画に基づき、提案CT画像再構成法の性能向上へ向けて高精度化と高速化の観点から検討を行い以下の実績を得た状況にある。 (1)耐ノイズ特性に優れた画像再構成法の更なる性能評価 前年度に開発した耐ノイズ特性に優れた空間周波数情報の推定法を、種々の空間周波数をもつ対称、非対称吸収率分布に対して、投影データ採取時のSNRを変え、画像再構成を行い、相対RMS誤差の観点から、旧提案手法、従来の2手法と比較した。その結果、設定吸収率分布、SNRにもよるが、旧提案手法より約7dB〜10dB、また従来法で最も高精度な2D-FT法より約14dB、再構成精度を向上でき、更にノイズに対する感度も同等以上に改善できるという結果を得た。(成果がまとまり次第、極力早く発表の予定) (2)逐次並列処理に基づく時間短縮法の開発 上記(1)のアルゴリズムを、昨年度購入の高速PCに実装し試験した。対象吸収率分布、SNRにもよるが、精度は殆ど同じで平均時間約13秒で再構成できた。これは従来の手法で最も高精度な2次元フーリエ法による約10秒と殆ど遜色ない速度であり、逐次並列処理よりもアルゴリズムの改良を優先すべきと考えている。 (3)高速DSPボード装備PC援用CT画像再構成システムの構築と性能試験 上記高速PCに昨年度開発の高速化アルゴリズムを実装し試験したところ、55秒であった。これに対し、TI社の浮動小数点型DSPボードを用いた場合には、精度の劣化は殆どなしに54秒であった。また、固定小数点型の同社DSPを用いた場合には、約32秒と画像再構成時間は約6割に減少した。ただし精度は相対RMS誤差で約10dB劣化した。それゆえ、固定小数点演算のFPGAの使用は、経費の大幅増の割には利点が少ないと考えている。
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