研究概要 |
地球環境の保全は人類の将来にとって非常に重要な課題である。そのなかで人工衛星や航空機による地球観測は,大局的なリモートセンシング技術であり,重要な役割を担っている。観測技術として,特に偏波を使つた合成開口レーダ(SAR)に寄せられる期待は大きい。基本データは偏波レーダによって観測される散乱行列である。この研究は散乱行列を使って,新しい3次元イメージング技術や偏波レーダ画像の判読方法を開発することにある。 今年度は,3次元イメージングや偏波レーダ画像の判読の基本となる散乱行列のコヒーレンス,集合平均,その性質について理論的に詳しく検討した。従来から一提案されている3成分散乱モデル,エントロピー法は集合平均のCovariance行列,Coherency行列に基礎を置いている。Covariance行列では,直線偏波基底での集合平均によって3*3の要素を導出し,それらの要素ごとの比較により表面散乱,2回反射散乱,体積散乱電力が導かれてきた。 ここでは円偏波基底で散乱行列を展開し,Covariance行列の要素を展開することにより,右回り円偏波と左回り円偏波の複素数相関値が人工物体を検出するパラメータとして有効であることを見出した。また,Coherency行列を4つの電力成分で分解するモデルを考案し,円偏波成分発生の電力が市街地の詳細な分類に適していることも見出した。新潟大学近郊の偏波画像データ(L-band,X-band)を例にとって解析したところ,円偏波基底の相関値の振幅と位相情報が地上ターゲットの特徴を良く表していることが判明した。さらに,その位相角情報が人工物体を直接導く重要なパラメータであることも見出した。 これらの成果は論文として,また,国際会議にも投稿中である。
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