研究概要 |
本研究は,「ハイブリッド表面温度計」の実用化への検討と「放射率不変条件」の有効性の確認を主たる目的としている。本研究の遂行で得られた諸知見を含めた研究成果を下記に列記する。 1.「ハイブリッド型表面温度計」を試作し,大気中での実験により,700K付近で系統誤差-5K,偶然誤差±1Kの精度の測定が可能となった。また,ファイバロッドと組み合わせ,局所的な測温(測定面積1mmφ)ができるハイブリッド表面温度センサを開発し,真空内での測定実験を可能とした。まだ実用化に至っていないが,十分可能性のある段階に到達した。 2.常温において,シリコンウエハのp-偏光放射率が特定の角度で酸化膜厚に依存せず,ウエハの光学定数だけに依存する「放射率不変条件」をシミュレーションで得ていたが,高温のおける実験結果は,この条件は成立しないことが明らかになった。今後,現象のメカニズムを解明していく必要がある。 3.常温付近で1.1μm以上の波長で半透明体となるシリコンウエハに対し,ブリュースター角(55.2°)で酸化膜厚によらずp-偏光透過率が一定となることを利用し,2つの黒体を設置し,その1つの黒体の温度を変化させることにより,実効反射率を求め,もう1つの黒体はウエハを透過する放射輝度を一定に保つ役割を持たせて,最終的に放射率を求める方式を利用した常温付近での放射測温法を提案した。 4.シリコンウエハに酸化膜(SiO_2)が成長する際の放射率挙動モデリングをすでに開発していたが,これを用いてp-およびs-偏光放射輝度比と放射率の間に1対1に対応する条件があることを見出した。実験により,これを利用した放射率補正放射測温法(放射率と温度の同時計測法)が非常に有望であることを確認した。今後,この方式の精度改善を目指し,in-situ温度計測への応用を検討する。 以上の研究成果に関連し、学術誌へ3件の論文投稿,国内外学会・ワークショップで20件の発表を行った。
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