研究概要 |
近年、研究が急がれている非破壊評価技術の一つに、構造用金属材の疲労の蓄積状態を確実に把握する技術がある。我々は、残留磁化法によるオーステナイト系ステンレス鋼の疲労蓄積量推定法の研究を行っており基礎的であるが有益な結果を得て,いくつかの論文等で発表してきた。 本年度は,準備の整った差動ピックアップ型と漏れ磁束型の2種類を用いて、アクティブ型磁気センサを使った計測システムを構築し,磁気センサの評価と疲労推定の実験を行った。差動ピックアップアクティブ型磁気センサにおいては,SUS304を疲労試験材とし,ロックインアンプと組み合わせ,励磁周波数50kHz,励磁電流10mAで差動ピックアップコイルから良好な疲労に比例した出力を検出した。一方,フェライトコア入りサーチコイルを備えた漏れ磁束型の磁気センサでは,疲労に比例した信号は検出できなかった。差動型は感度は高いが,使用法が極めてクリチカルであるため,漏れ磁束型の改良がこれから必要であると考えられる。SUS304と組み合わせた差動ピックアップアクティブ型磁気センサは,従来の残留磁束方式と同じように疲労によるマルテンサイト変態に起因した透磁率の変化を検出しているものと思われる。しかし,この型のセンサは,疲労による転位に増加などによる導電率の変化に対しても感度があると考えられることから,今後,対象材料を広げて顕彰していく予定である。 さらに,この研究のもうひとつの目的であった残留磁束方式の高度化と対象材料の拡大に関しては,SUS304ばかりではなく,SUS304L,SUS316,SUS316Lなどに対しても試み,有意義な結果が得られた。特に,組成の関係で室温でオーステナイトが安定でマルテンサイト変態をほとんど起こさないといわれていたSUS316系のステンレス鋼においても残留磁化法が適用できることを見出した。
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