研究課題
基盤研究(C)
非リズム社会を象徴しているシフトワークや時差飛行における生体リズムの振舞いをモデルに基づいて予測し、生体リズムの引き込みを制御することによって適応不全を最小限にするような戦略を提案することが本研究の目的である。(1)光応答性を有するヒトの体内時計のモデルを構成した。これは振動子I、II、およびSWの三振動子からなる我々のモデルに光位相反応特性を新たに導入することで実現した。(2)モデルを用いて時差飛行下の生体リズムの振舞いをシミュレーションした。これにより順行性、逆行性、分離再同調のそれぞれがどのようなメカニズムで起きるかを明らかにした。すなわち、光を浴びたときの位相反応量とその符号、および振動子IからIIへの相互作用関数の位相反応直後の値によって決定されることが分かった。(3)さらに、到着地での休息-活動サイクルに合わせて運動を行なうと分離再同調が抑制されることがシミュレーションから分かった。そのメカニズムについては、(2)での条件に加えて、振動子SWからIIへの相互作用関数の位相反応直後の値によって再同調方向が決定されることが分かった。以上の知見に基づいて再同調が早くて時差ぼけの少ない飛行スケジュールを、東京-ニューヨーク間の飛行を想定して提案した。(4)位相振動子は振幅を持たない振動子である。一方で、我々が提案していた睡眠の体温調節機能に基づいた睡眠覚醒リズムモデルは覚醒度を予測できるという利点を持つが、定常状態におけるダイナミクスを対象としており、振動子の位相関係がダイナミックに変化する環境には適用できなかった。そこで両者を結合することにより統合的モデルを構築した。これは、振動子I、IIによる位相をそれぞれ振動子X、Yのそれに対応付けることによって行った。これにより、様々な明暗パターン、就労環境下における覚醒度や生体リズムの振舞いを予測する枠組みが整った。
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