研究概要 |
本研究の目的は、多次元時系列モデルの実現理論と確率部分空間同定法のアルゴリズムの新しい方法を提案すること、および閉ループ同定法への応用である。本年度の成果は以下の通りである。 1.オペレータモデルを用いた連続時間閉ループシステムの部分空間同定法を提案した。連続時間システムといえども、同定のために利用できるデータはサンプルされて得られる離散時間データである。このため、連続時間システムの等価な離散時間システムとしてδオペレータモデルを利用したアルゴリズムを提案して、IPD制御器を含む化学プラントモデルを用いたシミュレーションによりその有効性を確認した(Asian J.Control,2004年9月)。 2.出力観測値に低確率で大きな値をとる雑音(異常値)が含まれる場合の線形時不変確率システムの状態空間モデルを同定に対して、Least-Trimmed-Squaresと部分空間法を組み合わせた新しい方法を提案した。この方法では、まず直交分解に基づく部分空間同定法によってシステムの粗い推定値から観測出力の残差を求め、Least-Trimmed-Squaresの方法を用いて異常値を検出する方法を考案した。ついで重み付きLQ分解によって、システム行列を具体的に求める方法を与えた(IFACワークショップ、横浜、2004年9月)。 3.われわれが先に提案した部分空間同定法であるORT(Orthogonal Decomposition)法を利用して、結合入出力法による閉ループ系の同定法を考案した。また、閉ループ同定における外部入力のもつPE(持続的励振)条件についても詳細な検討を行なった(Automatica,2005年5月)。
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