研究概要 |
複数の独立変数を持つ多次元(nD)システムの強安定化問題に対し,これまで1入力1出力(SISO)の場合の必要十分条件が解明されたが,多入力多出力(MIMO)の場合の可解条件や強安定化補償器の設計などの問題がまだ解決に至っていない.本研究の最終の目的は,強安定化補償器の設計アルゴリズムの開発とMIMO場合の可解条件の解明である.現段階では,以下の結果が得られている. 1.nD強安定化補償器の設計問題は,本質的に(1)代数多様体が一定な条件を満たす安定な有理関数または多項式を構成することと,(2)ある多変数有理関数または多項式の代数方程式を解くことに帰着できる.(1)の問題が解決できれば,(2)の問題はGrobner基底法などを利用して解決可能であることを解明した.しかし,(1)で構成しようとする多変数有理関数と多項式は,ある特定な曲面を含むと同時に,安定でなければならない.最初は解析、代数的な方法で解決しようと考えたが,結局これは非常に困難であることが分った.従って,伝達関数領域での一般的な解析解の代わりに,まず状態空間において特殊解を数値的な方法で求めることを試みている.その準備または関連結果として,状態空間の低次元実現の方法,μ解析法による多次元システムのロバスト安定性の判別,パラメータ空間におけるシステムの可安定化と可同時安定化の等価性の解明などの結果を得た. 2.多入力多出力の場合に関しては,制御対象の伝達行列が小行列式既約の(minor coprime)な行列分解表現を持つとき,その分母分子多項式行列が一定の条件を満たすとき,この制御対象を強安定化する補償器が存在することを示した.しかし,これらの十分条件はこれまで得られた必要条件は一致しないので,完全な必要十分条件の導出はまだ検討中である.
|