研究概要 |
フィードフォワード制御は,計測可能な信号情報を利用することにより制御性能を改善できることからその有効性はよく知られている.しかし制御対象のモデル精度に大きく依存するために一般的な状況下ではオンラインで適応的にフィードフォワード制御を安定に実現していくための方法論の構築には幾つかの未解決な課題があり,安定な実現を可能にする理論的枠組みを確立することが本研究の目的である.前年度の研究成果を踏まえて、制御対象に未知の非線形ダイナミクスが含まれる場合には、非線形モデルを適応的に同定しつつ、その逆システムを構築することにより完全に線形化することも可能である。また、閉ループ制御系の目標値応答特性の改善には制御対象のモデルが知られているならば最適にフィードフォワード制御器を設計することが可能となる。さらには非線形ダイナミクスをもつ場合への拡張、未知物理パラメータをもつフィードバック制御系をフィードフォワード型の適応同定アルゴリズムを適用できる新しい構造や方法論の開発、などを目的として研究を行った。本目的のもとで得られた平成16年度の成果は以下の通りである. (1)MRダンパのモデルをLuGre非線形摩擦モデルを修正することにより、そのヒステリシス特性を数式表現をし、モデルパラメータと内部状態を推定する適応オブザーバを内在した実時間同定アルゴリズムを提案した。モデルは電圧とバンパシリンダ速度を入力とし、減衰力を出力とする2入力1出力モデルで表現される。これにより秘湯とされる減衰力を生成する制御入力電圧を解析的に実時間で計算することが可能となった。さらに必要とする減衰力を発生するために双線形系のH無限大制御系設計とリンクさせ、減衰力と変位速度とのグラフ関係が第1および第3象限に生じるように設計を実現することによりセミアクティブの達成限界を実現することに成功した。 (2)負荷とモータを軸結合した2慣性系の2自由度速度制御系において、目標値応答特性を達成するフィードファワード制御器とフィードバック制御器を自動的に反復的チューニングアルゴリズムを開発した。モータおよび負荷の各慣性モーメントと各減衰係数、および軸剛性係数の5つ物理パラメータにより直接チューニングしている点に特徴があり、チューニングだけでなくパラメータ同定も同時に行うメリットがある。 (3)マルチチャンネルの音場再生制御システムにおいて,音場再生制御器と室内伝搬路との畳み込みをインパルスとする規範応答を適応的に実現する新しい方法を開発し、数値シミュレーションにより、従来法と比較して高精度な再現精度が得られた。
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