研究概要 |
自動車の加速或いは減速時には,タイヤと路面との摩擦係数が走行性能に大きく影響する。雨や雪の日には摩擦係数が小さくなり,タイヤが空転して加速できない,或いはブレーキをかけてもスリップして車体の減速ができないという現象が生じる。このようなタイヤの空転現象に対して,現在は運転者のテクニックで対応,或いはファジー制御や線形制御理論を用いて,すべりが少なくなるような制御装置を設計しているが,非線形項であるタイヤと路面との摩擦係数の変動を積極的に考慮に入れておらず,より性能の高い制御システムを構築し,車の安全性,燃費を高めるためには,非線形項であるタイヤと路面との摩擦を積極的に考慮したシステムの構築が必要不可欠である。一方,自動車の駆動制御には駆動トルク,車輪の回転速度,車体の対地速度が必要であるが,これら3つの状態変数のうち車体の対地速度を測定することは困難である。そこで,外乱オブザーバを用いた推定値が代わりに用いられることが多い。しかし,実際の対地速度の代わりに,この推定値を用いた場合の制御系の安定化は明らかにされていない。 そこで,平成17年度の研究では,平成16年度に行った自動車の駆動制御システムを一般化した2慣性系の安定化制御システムの理論を新たに構築し,シミュレーション及び2慣性系の実験によりその有効性を確認した。さらに電気学会の論文誌(産業応用部門誌D)に,この成果をまとめた。
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