研究概要 |
1.衝撃剥離試験 この試験についてはJIS規格に規定がなく、H15年度に本科学研究費で購入した衝撃試験機を用いて、本研究のために独自に試験体を考案した。すなわち100x75x20mmの長方形のスギ試験体を作製し、この側面、幅75mm,厚さ20mmの両端部20x20mmに鋼材面をエポキシ樹脂で接着した。するとこの幅75mmの木片の中央部には75mm-20mm-20mm=35mmの長さの木面が残ることになるが、この面に衝撃試験機のハンマーを衝突させることができる。よってハンマーの衝撃時には両端部20x20mmの接着面に垂直に衝撃的剥離力が作用することになる。二面の剥離面を持つ鋼片は上下方向は試験機に固定されており、加力方向には移動可能となっており、小型ロードセルによって衝撃力を検出する。以上のような試験片を10個製作し試験を行なった。ハンマーの持ち上げ角度は135゜であり、これの衝撃後の振り上がり角度の平均値が126.5゜であり、最大が128゜,最小が119゜であった。衝撃剥離強さの平均は1.68N/mm^2であり、最大は2.65N/mm2であり,最小は0.660N/mm^2であったことから、バラツキは大きい。しかしすべての試験片の木破率は100%であった。挿入鋼鈑型集成材ばりの、曲げ破壊時の引張り縁側の接着面の木破率が、80%程度であるので、この衝撃試験の結果は、曲げ破壊時の接着面の剥離を再現したとは言えず、課題として残された。 2.引張側複数挿入鋼鈑型集成材の曲げ試験 断面120x60mm,スパン216cm(スパン/桁高=18)のスギ集成材の上側スリットに40x9mmの挿入鋼鈑を接着し、下側(引張側)に、同じ寸法の挿入鋼鈑1枚(Type-A),40x4.5mmの挿入鋼鈑2枚(Type-B)、40x3mmの挿入鋼鈑3枚(Type-C)の試験体をそれぞれ3本製作。したがってこれら三種類の試験体は等しい曲げ剛性を有する。これらのスパン中央一点載荷試験を実施した。曲げ終局荷重の平均はType-Aが25.9kN, Type-Bが27.1kN, Type-Cが30.7kNでそれぞれのバラツキは極めて小さかった。これら終局荷重の差異は、鋼板の厚さの違いに由来する、降伏点の差異に依存していたことは、鋼材の材料試験の結果より、ほぼ説明できる。すなわち引張縁側の木部の破壊性状の違いによるものではなく、挿入鋼板が薄くなるほど降伏点が増加することによる、曲げ強度の増加と判定された。それにしても、同じ剛性を持つのであれば、引張側複数挿入鋼鈑のほうが桁としての性能が増すと結論できた。またType-A, B, Cの順に引張縁の木部が破壊した後も、挿入鋼鈑が十分な延展性を示し耐力を失うことはなかった。
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