研究概要 |
近年,連続合成少数主桁が経済的な橋梁タイプとして注目され建設数が急増する傾向にある.連続合成桁では,中間支点位置で負曲げモーメントが生じ,コンクリート床版に引張力が導入され,ひび割れ発生の原因となる.ひび割れは耐久性に大きな影響を与えることから,ジャッキアップダウン工法やPC鋼棒によるプレストレス導入による引張力を打ち消す対応策が取られていた.しかしながら,これらの対応策は建設コストアップの要因となっている.そのため,最近では,ひび割れを許容するひび割れ幅制御設計法が採用されるようになっている.具体的には,ひび割れ幅算定式よりひび割れ幅を推定し,架橋現地の環境条件に応じて指定される許容ひび割れ幅以下とする設計である. さて,床版のひび割れ幅算定式として,我が国では既に2つの手法が提案されている.しかし,これらの手法では,ひび割れ状態が,荷重レベルあるいは発生する負曲げモーメントの大きさに関係なく安定ひび割れ状態(新たなひび割れが発生しない程度にひび割れが発生しており,ひび割れ幅が広くなっていく状態)を仮定している.例えば、スパンが30m前後では,負曲げモーメントがあまり大きくなく,ひび割れが発生しない橋梁が多い.しかしながら,これまでの提案手法によれば,多数のひび割れが生じた状態を想定したひび割れ幅の計算を行うという大きな矛盾が生じる. 本研究では,ひび割れ状態を,ひび割れ発生(交通荷重による応力とコンクリートの収縮による応力の合計がコンクリート床版の引張強度に達する),初期ひび割れ状態(次々とひび割れが発生する),前述の安定ひび割れ状態に区別し,各ステップに応じたひび割れ幅算定式を提案している.あわせて,関連する鉄筋応力の算定式を提案している.また,提案手法の妥当性を実験的研究と通して確認している.
|