研究概要 |
本研究は,近距離入力地震動の空間変動と地盤・構造物の相互作用の影響を考慮した鋼桁橋の桁間衝突の特性を明らかにし,その結果を橋梁の耐震設計に役立てることを目的とする三年間の研究であり、平成十七年度はその最終年度にあたる. 本研究で得られた主な結果は以下の通りである. もし隣接構造物が軟弱地盤にあり、構造物の固有振動数が互いに近かった場合、空間変動を有する地震動によって構造物の相対的な変位量は増幅し、結果として橋梁の破壊する可能性が増すことが明らかとなった。 もし軟弱地盤で隣接構造物が同じ細長比ではない場合、たとえ両構造物が同じ固有振動数を有し同一地震動を受けても衝突が起こる。なぜなら細長比が異なる隣接構造物は異なった位相で振動するからである。 固有振動数比が0.6以上の場合、非同一地震動と地盤構造物相互作用の同時考慮では、大きな接触力が発生するため橋桁の被害可能性を著しく増幅させる。結果として、複数の継続衝突による被害が起こり得る。 固有振動数比1.0周辺あるいは高固有振動数比1.6以上では、非同一地震動は地盤構造物相互作用に比べて強い影響を及ぼす。しかしながら、隣接構造物が異なる細長比を有する場合では、固有振動数比1.0であっても、地盤構造物相互作用が非同一地震動よりも強い影響を及ぼす。 現行の日本の耐震設計は,地震動の場所ごとの変化の影響を暗に含んでいるなど,最先端の研究成果を取り入れ,最も厳しい基準となっているものの,隣接する構造物がフレキシブルであったり,隣り合う構造物が異なる地盤-構造の相互作用を受ける場合には,要求される桁かかり長さが不十分であることが明らかとなった.たとえ,隣合う二つの構造物が同じ細長比と基本周期を持ち,同じ地震動を受けても,もし,支持地盤が一様でないならば,異なる地盤構造物の相互作用が発生しうる.このように異なる地盤-構造物の相互作用は構造物の相対的な応答に大きな影響を及ぼすので,今後,耐震設計基準において空間的に非一様な地震動の影響も考慮に入れるべきであるといえる.
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