研究概要 |
コンクリート構造物の設計は、これまでは新設に重みを置いてきたが、いかにして今まで構築されてきた構造物を永く共用して行くかに重点が移行してきている。コンクリート構造物は、耐久性が高いといわれてきたが、それらの寿命が土木技術者が考えてきたよりもかなり短いことが最近の研究でわかってきた。港湾、鉄道、道路構造物などでの寿命の短さが顕著となっている。そのため、現在使用している構造物があと何年利用できるかなどの補修時期を遅らせるための診断技術等が数多く研究されている。 本研究では、劣化を受けた既設コンクリート構造物のひび割れモードを考えることで、第三者障害を考慮した使用限界状態の予測モデルを開発した。コンクリート構造物の劣化には、鉄筋腐食までの潜伏期、鉄筋腐食膨張によりひび割れが発生するまでの進展期、その後、腐食進展が加速する加速期がある。使用限界状態で問題となる時期は、ひび割れが発生する進展期であり、それもひび割れモードにより大きく異なる。ひびわれモードは、鉄筋径、間隔、かぶり、コンクリート強度により変化することが自明であり、たとえば、鉄筋間隔が狭い場合、鉄筋同士を結んだ水平ひび割れのはく離となるのに対し、間隔が大きい場合、鉄筋に沿ったひび割れとなる。鉄筋同士の間隔が大きい場合、かぶりによりひび割れモードは異なる。かぶりが小さい場合ははく離ひび割れとなり、大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。ひび割れが発生する限界腐食量を鉄筋に沿ったひび割れおよび水平剥離ひび割れについて乾湿繰返実験により求めた。はく離と鉄筋に沿ったひび割れモードの境界となる無次元量D/φは2.0〜3.0となり,これより小さい場合は表面はく離ひび割れ,大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。水平剥離ひび割れと鉄筋に沿ったひび割れモードの境界となる無次元量1/φは5.5〜7.0となり,これより小さい場合は水平はく離ひび割れ,大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。ひび割れ発生限界腐食量の特性値は、15%危険確率を容認するならば、はく離ひび割れモードでは39mg/cm2、水平はく離ひび割れモードでは30mg/cm2が特性値として得られた。
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