研究概要 |
基礎地盤もしくは土構造物内に補強材を敷設(設置)して,土構造物の剛性や強度を増加せしめようとする補強土工法のアイデアは,古くから土木技術の一つの要であった.既設の土構造物は様々な補強土工法の恩恵の上に機能を持続し続けている.しかし昨今の社会ニーズは,新規構造物の建設から既設構造物の維持・補修に移りつつある.土構造物が過去に受けた履歴と無関係に,その構造物の最終的形状だけで決まる現行設計法では対処しづらい.構造物の部分的なリニューアル,機能更新や機能変更が求められるからである.本研究課題はこのような社会ニーズに合理的に答えうる技術体系の確立を目的としている.土という特殊な材料に対する合理的な補強方法を,土と補強材との力学的相互作用に注目して提案しようとしている.すなわち最適補強効果の同定である.その骨子は,土のせん断変形(ダイレタンシー変形)を補強材が拘束するという考えに基づいている.土(不飽和締固め土)のせん断特性の記述がキーとなる.最終的に,初期値・境界値問題として定式化することにより,土構造物の形状,環境変化に伴う個性を陽に取り扱うことができ,将来の状態の予測につながる.これにより,その土構造物の経年的機能変化,品質評価が可能となる.平成15年度の成果としては,締固められた不飽和土を対象に,サクションを考慮した土の締固め度合いの定量化,ダイレタンシー拘束による補強効果発現メカニズムを検証,ダイレタンシー特性を決定する最大締固め荷重(過圧密度合い)の推定法の提案を行った.さらに,これらの成果を組み込んだ数理モデル(有限要素解析手法)を開発した.これにより補強効果の定量化が可能となる.最終的には,社会ニーズに応えるべく,補強された土構造物の経年的機能変化,品質変化を予測できる手法としてまとめあげたいと考えている.
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