地盤液状化に伴なう被害軽減のために、液状化時の地盤変形量予測手法の精度向上が求められている。この研究では、1回の打撃による瞬間液状化、ならびに振動台を用いた繰り返し加振による液状化の二つの液状化再現方法を用いて模型地盤を液状化させ、土粒子レベルでの土の変形を観察し、液状化後の地盤の変形抵抗性を調べた。また液状化度の強度回復特性を明らかするための中空ねじり試験も実施した。この研究の結果明らかになった事項は以下の通りである。 1)水平地盤で液状化が生じた後しばらくの間、骨格構造が破壊され土粒子が懸濁した状態が出現する。その継続時間は、土粒子が沈降し、骨格構造が再生されるまでの時間に相当する。 2)骨格構造の破壊された、土粒子が水中に浮遊・懸濁した状態で移動するときには質量の大きい土粒子の移動が遅れるため、土粒子同士の接触が始まり、ダイレイタンシー効果による間隙水圧降下が始まる。 3)繰返しせん断による液状化の場合は、せん断力の作用方向の反転と地盤変形のため過剰間隙水圧は周期的に上昇・下降を繰り返す。 4)液状化地盤上の盛土沈下は間隙水圧の高い状態の間に進行する。その沈下過程は、粘性流体中の浮体の沈降現象と捉えることが出来る。せん断力が繰返し作用して液状化した地盤内では、1波ごとの単位沈下量を加算することによって沈下量を計算することができる。 5)この計算法は中型振動台実験の時刻歴を精度よく再現できる。 以上の検討結果を総括すると、液状化した地盤は、限定的な時間内ではあるが流体的な性質を有する。流体的な性質を有する時間は、骨格構造が再生するまで継続し、骨格構造は土粒子の沈降、または水と土粒子の全体が移動することによって再生することが明らかとなった。このような液状化後の土の性質の非定常的な変化を追跡できる混相体としての力学的取り扱いが必要である。
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