研究概要 |
平成15年度の研究成果は下記1〜3の項目から構成され,以下にその概要を記載する. 1.室内傾斜地盤と小型現場せん断試験装置の製作 本研究の目的の一つは,小型現場せん断試験装置(幅15cm×長さ60cm×高さ50cm,総質量6.2kg)の性能検定と改良を行うことである.本項目では,垂直応力の大きさやせん断応力の載荷速度などの影響を検討するため,試験条件を制御しやすい実験室内において0〜50°の範囲で任意の傾斜角を設定できる室内模型地盤とその上に据え付ける小型現場せん断試験装置を製作した. 2.関門層郡風化土の断層における斜面崩壊の現地調査と土質試験の実施 本項目では,不連続面を有する斜面崩壊の一例として平成15年3月に山口県豊田町で発生した切土法面の崩壊を取り上げ,崩壊斜面の現地調査および採取した土試料の物理試験および一面せん断試験の結果,さらに他の関門層群切土崩壊との比較により本崩壊の機構について検討した.今回の切土斜面の崩壊に関しても,提案した危険因子の表により,崩壊の発生・非発生を概略判定できることを確認し,強風化,黒色薄層土,摺曲構造などの要因に加え,不連続面の一つの断層面の存在により安定性が低下したことが崩壊の引き金になったと結論付けた. 3.根系を含む表層土の一面せん断試験法の確立 本項目では,現地で採取した表層土の根系の分布を調べ,その含根率を基に根系を混入させた一面せん断試験を実施した.さらに,まさ土に根系の代替材として麻紐を混入させて一面せん断試験を実施した.両試料の試験結果に基づいて,根系の補強効果とその機構について検討した.主要な結論は以下のとおりである.(1)補強効果は内部摩擦角の増加よりもむしろ粘着力の増加に起因するものと考えられる.(2)高い拘束圧下より低拘束圧下の方が根系の影響は発揮されやすい.
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