研究概要 |
本研究では,不透水性地層に根入れする遮水鋼矢板の必要根入れ長とその遮水性能に関して,安全な廃棄物埋立護岸の設計に資する知見を得ることを目的としている.今年度は,海面管理型処分場において遮水工として粘土層内に鋼矢板を根入れした場合を対象として,地下水解析ソフトGMSを用いて遮水鋼矢板の根入れ長の違いと地盤条件の違いに着目した浸透流解析及び汚染物質の移流拡散解析を行った.得られた結論を以下に示す. (1)浸透流解析 砂層の有無に関わらず,根入れ長が増加すると浸透経路が延長されるために浸透流量が減少した.また粘土層下部に砂層がある場合はない場合と比較して浸透流量が増加した.これは水の浸透が砂層に影響されたためであると考えられる.浸透流量をみると粘土層下部に砂層がある場合には根入れ長が200cmから350cmに増加した場合,浸透流量が1.24×10^<-3>cm^3/s減少したのに対し,砂層がない場合においては2.27×10^<-3>cm^3/sの減少と砂層の有無によって浸透抑制に1.8倍の差があることが分かった.また浸透流量は同じ地層,同じ根入れ長であっても地盤に対して根入れされている比率にも影響する.地盤に対して根入れされている比率が0.61である場合の浸透流量は5.9×10^<-3>cm^3/sであるのに対し,比率が0.93である場合の浸透流量は3.5×10^<-3>cm^3/sと比率が1.5倍になると浸透抑制に1.7倍の差があることが分かった. (2)移流拡散解析 砂層の有無に関わらず,根入れ長が増加すると,浸透経路が延長されるために,カオリン最上層における矢板外近傍地点での任意の時間におけるC/C_0の値は低くなり,これは地盤条件を変えた3ケースすべてにおいて現れた.しかしながら,砂層がある場合ではない場合と比較して,矢板外近傍地点ではC/C_0が約0.5になる時間の増加割合は,根入れ長が200cmのケースでは約1.13倍であるのに対し,根入れ長が250cmのケースにおいては約1.26倍,根入れ長が350cmのケースにおいては約1.28倍と根入れ長が増加するにつれて大き<なり,汚染物質の浸出現象が根入れ長のみならず砂層の影響を受けることが明らかになった.
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