研究概要 |
本研究では難透水性層と透水性層からなる地盤条件下において,難透水性層に鋼矢板を根入れした場合,鋼矢板の根入れ長の変化および矢板内外の水位差の変化が地盤内の汚染物質の拡散抑制性能に及ぼす影響について検討するために,遠心模型実験を行なった.また,解析ソフトGMSを用いて実験と同条件下の移流拡散解析を実施し,実験結果と比較検討を行なった.得られた結論を以下に示す. (1)同根入れ長下において,矢板内外の水位差が1.35倍大きい時,浸透増加割合は約4.2倍大きくなることが分かった.したがって,矢板内外の水位差を低く保つことは浸透抑制に有効である. (2)根入れ長を増加させ,浸透経路を延長することにより,矢板外での汚染物質の深さ方向の濃度分布の違いを再現できた. (3)根入れ長を増加させることにより,矢板内での汚染物質の封じ込め効果は大きくなるが,砂層近くまで根入れさせると,砂層が汚染物質の拡散を助長する役割を果たす可能性があることが実験より示された. (4)含水比から推測される地盤状態の違いにより,地盤内の汚染物質の濃度に違いが大きく現れたことから矢板の根入れ長のみならず,地盤状態による汚染物質の拡散抑制が確認できた. (5)GMSによる移流拡散解析の結果,実験と同様に矢板内での汚染物質の封じ込め効果が確認できた.また,粘土地盤の透水係数を水平方向に大きくすることにより,実験値との整合性が高くなったことから,模型地盤において,水平方向の透水係数が大きいと十分考えられる.
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