本研究では、地震予知の分野で用いられてきたVAN法を、坑道や斜面での岩盤構造物の破壊予知へ応用することを考え、岩石力学的見地から電気的特性を調べ、地盤材料の破壊予測手法への適用性について検討してきた。 過去3年間においては、クリープ載荷および繰り返し載荷における岩石内部に発生するAEおよび電位差を計測することによって、電位差の発生とAEの発生の関係を明らかにし、さらに、微小ひずみの進展とAEおよび電位差発生の関係を実験的に調査した。その結果以下の点について明らかになった。 (1)AEの計測においては、載荷中の供試体内部における微小亀裂の発生時期を知ることができた。 (2)繰り返し載荷試験においては、載荷時の変形速度が上昇傾向に転じる時点から、発生電位差は増加に転じる傾向が見られる。 (3)電位差の発生傾向としては、1サイクル目から徐々に減少していき、ある点から増加に転じた後破壊に至っている。 (4)含水比が増加すると、破壊時に発生する電位差が大きくなる傾向が確認された。このことは、圧電鉱物による電位発生のみではない、地下水の移動や鉱物粒子の摩擦などによる電位の発生が大きいことを示している。 また、斜面模型を用いた斜面崩壊実験における電位差計測によって、マサ土の移動によっても電位が発生することが明らかになった。この事実は、岩盤構造物のみでなく土構造物においても、電位計測による破壊予測手法が適用できる可能性があることを示している。 今後は、以上のように明らかになった地盤材料の電気的特性を、実際の斜面や地下空洞の破壊予測に如何に適用するかについて研究していく必要がある。
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