急峻な海岸線に設置された道路では、高波による通行障害が発生している箇所が少なくない。こうした道路の安全性を確保するためには、車両被害や視界障害の原因となる越波飛沫の影響を定量的に評価する必要がある。本年度は、消波ブロック被覆式護岸を対象として、高波による通行障害の実態を明らかにするとともに、系統的な水理模型実験と現地観測の結果に基づいて、越波飛沫の飛散特性を明らかにした。 過去10年間(1991〜2000年)に、高波による通行規制が講じられた区間(合計15箇所)を対象として実態調査を行った。高波による通行規制区間における護岸は、50年確率波浪に対する越波流量が10^<-3>〜10^<-2>m^3/m/sのオーダーの場合が多く、設計基準による許容値10^<-4>m^3/m/sを上回っていることが明らかになった。さらに30km/hrで走行中の小型トラックに越波が作用しフロントガラスが破損した事例を分析した。波浪および潮位の時系列データから、事故発生時の越波流量は5×10^<-5>m^3/m/sと推定され、設計基準を下回る条件でも危険となることが示された。次に越波飛沫の空間的な飛散特性を把握するため、2次元水路(長さ28m、幅0.6m)において水理模型実験を実施した。これに現地観測結果を加味することにより、消波ブロック被覆式護岸の構造条件(消波ブロックの天端高さ、天端幅、設置水深)および波浪条件をパラメーターとした越波飛沫の水平および鉛直分布の算定法を提案した。 また、従来型とは異なる構造形式として、直積消波ブロック式護岸および消波型高基混成堤を対象とした2次元水理模型実験を行い、基本的な水理特性をとりまとめた。
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