研究概要 |
本研究では,流体中に含まれる固体物質(以下,粒子)の運動と輸送現象を高い精度で再現する数値解析手法を構築し,現象解明と工学的な評価に役立てる手法を得ることを目的としている.本年度は、昨年開発した2次元場における固気液混相場に対する統一的解法(MICS)を3次元化するとともに、大規模な問題へ対応できるように領域分割法に基づく並列計算法を導入した。並列計算法の導入に際しては、分散メモリシステムにおける高速計算が行えるように、SPMD型のプログラムをMPIを利用して最初から再構築するという検討を行った。京都大学メディアセンタの大規模SMPクラスタを用いて計算速度の向上を検討した結果、複数のCPUを用いることによる効果が確認された。解析モデルの3次元化に際しては、サブセル法を用いた固体領域の体積評価法や、複数の固定障害物(ボックス)が存在する中での圧力計算法など、多くの新しい工夫を加えている。 本年度は、上記のようにして開発された3次元MICSの有効性を検証するため、造波装置を備えた小型の水槽を作成し、基礎実験を行った。実験では、下流部に段上がり部分(ステップ)を設けて、水面波の把捉や波高がステップ前後でどのように変化するかを捉えた。また、ステップ上部に直径40mmの大粒径アクリル球体を9個設置して、波動流れによりそれらが輸送される状況を計測した。この実験では、ステップ部分にボックスを1つないし2つ置いた実験条件での計測を合わせて行った。この条件では、波動流れやアクリル球体がボックスに衝突することにより、複雑な現象となる。 本年度開発された3次元MICSを上記の基礎実験に適用し、現象がどの程度正確に再現されるかを確認した。その結果、ステップ近傍の波速と波高の変化、またアクリル球体の運動等が妥当に計算されることが示された。上記の過程により、実験室規模の現象に関しては、3次元MICSの検証がなされたと考えられる。
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