研究概要 |
本研究の目的は,高松平野における水循環や水利用を検討する際の要となる,不圧地下水の流動と水質の実態を明らかにすることである。高松平野の西部から中央部にかけては扇状地が広がっており,地下水流動の解析には旧河道など地下水が選択的に流れる水ミチを特定することが必要である。そのために,我々がこれまでに調査・分析したデータのみならず他機関によるデータも収集・データベース化し,地下水の流動や水質の場所的・時間的な変化を検討した。 平成15年度では,主に,(1)航空写真判読による旧河道位置の推定と不圧帯水層の地質データの収集,(2)74箇所の井戸での不圧地下水の水位・水質(水温,pH,電気伝導度,酸化還元電位,溶存酸素,各種イオン(主要成分と鉄,マンガン))調査・分析,(3)香川県による不圧地下水の水質データの収集・整理を行った. 収集した水位データを検討した結果,次のことを明らかにした。(1)地下水位の等値線は標高の等高線にほぼ平行となること,(2)地下水位は8・9月に最高に,3・4月に最低となり,その変動幅は1〜2m程度であること,(3)高松平野全般における地下水位の経年的な変動傾向は認められないこと,(4)降雨に対する水位の応答は近接地点間でも大きく異なり水ミチを考慮することが必要であること,などである。 また,水質データの検討より以下の知見を得た。(1)pHが7〜8を示す地点は夏季には平野の北部や西部に偏在するが,冬季には中央部にまで拡大すること,(2)酸化還元電位には季節的な変化が認められること,(3)主要イオン量に基づくヘキサダイヤグラムより,溶存イオン量の多いグループ,少ないグループ,施肥や家庭雑排水の影響を受けているグループ,海水侵入の影響を受けているグループの4つに大別できること,(4)年間を通じて硝酸性窒素が環境基準を超えている地点が存在することなどである。
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