研究概要 |
本研究の目的は,高松平野の水循環や水利用を検討する際に不可欠な不圧地下水の流動と水質の実態を明らかにするとともに,硝酸性窒素による地下水汚染が進んでいる地域において汚染源の特定することである.そのために,平成16年度では(1)高松平野の浅井戸65地点での水位,水質の調査と変動特性の検討,(2)香東川左岸地域での詳細な地下水位,水質の動態調査,(3)流動の数値解析による不圧帯水層と被圧帯水層間での水移動の検討を行った. 高松平野において3ヶ月に1回の頻度で行った地下水位・水質調査の結果より,ヘキサダイアグラムを作成し,水質の変化を検討した.その結果,溶存イオン量の多いグループ,少ないグループ,施肥や家庭雑排水の影響を受けているグループ,海水侵入の影響を受けているグループの4つに大別できること,また,年間を通じて硝酸性窒素が環境基準を超えている地点が複数存在することを示した. 硝酸性窒素濃度が年間を通して高い地域として香東川左岸の扇状地である地区を選び,土地利用調査,使用している肥料に関するヒアリング,7回の現地調査における水位,EC,pHの測定,主要イオン成分の分析及び2回の窒素,水素,酸素の安定同位体比の分析を行った.その結果,高濃度の硝酸性窒素は無機肥料だけでなく有機肥料や牛舎からの畜産廃棄物によるものと推定された.なお,多くの地点において窒素同位体比が既往の研究の値を大きく超えていたため,アンモニア揮散の影響を考慮した解析を行った. 100mメッシュ上で被圧地下水の流動について不圧地下水との水の交換を考慮した2次元数値解析を行った.その結果,詳細な水質調査を行った地区では不圧地下水から被圧地下水への涵養が盛んであることが判明した.このため,不圧地下水の硝酸汚染を軽減することが必要であり,そのために施肥の種類や量を改善することが有効であることを示した.
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