研究概要 |
非圧縮性粘性流れの支配方程式は,連続の式とNavier-Stokes方程式で表すことができる.両式をMAC法と部分段階法を組み合わせたアルゴリズムによって解析を行った.このアルゴリズムの特長は,中間速度場を求める発展方程式の非線形項を陽解法の3次精度Adams-Bashforth法,線形の粘性項を陰解法の2次精度Crank-Nicolson法で表すことにより,陽解法によるコンパクト化と陰解法による収束性と数値的安定化を,さらに速度と圧力の分離による解法全体の縮小化を同時に達成したものとなっていることである。圧力のPoisson方程式は4次精度で離散化を行うとともに,新ステップの速度場は,圧力に対しEulerの後退スキームを適用して計算する.なお,圧力のPoisson方程式およびNavier-Stokes方程式におけるCrank-Nicolson法の反復解法には面Gauss-Seidel法を用い,収束判定は平均自乗残差でそれぞれ10^<-4>,10^<-9>とした. 計算格子には,スタガード格子を採用することが多いが,境界条件の設定を始めプログラミングが煩雑なうえ,一般曲線座標系への拡張や高精度化にあたっては工夫が必要となる.一方,レギュラー格子は解の空間的振動(spurious誤差)の発生が指摘されているものの,物理量を同一点で定義することから特にプログラミングの上で簡便なうえ,高精度化や複雑境界問題に有効な一般曲線座標系への変換が容易という利点を有している.これらを勘案すると,DNSの汎用化にはコンパクトかつハンドリングのよい格子系の選択も重要な要素となることから,本研究ではレギュラー格子を採用し,その適用可能性を確認した. なお,懸念される数値的振動解については不等間隔格子を採用することで除去する.高レイノルズ数流れは、壁面境界付近を除くとあまりレイノルズ数に依存しないことから,この領域には相対的に疎な格子を充てることで,振動解の除去に加え効率的シミュレーションが期待される.不等間隔格子の生成には,計算空間への写像に伴うメトリック(metric)が解析的に得られるなど座標変換による誤差の混入を防ぐ意味から、双曲関数を用いる.なお,壁面付近への格子の配置は,概ね粘性底層およびバッファー層に総格子点数の約1/4が確保できるように設定する.計算は支配方程式を計算空間へ写像したうえで,差分近似を行った.
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