西オーストラリア半乾燥地で、2000年よりの3年間、蒸発-塩類集積の関係の解明のため気象・水文観測を実施した。本研究では、そこで得た種々データの詳細な解析や補助的実験を介して、当該の課題の考究を計るものである。 今年度に得られた結果は以下の通りである。 1.地表面反射率(アルベド) 現地では、乾季に顕著な蒸発によって地面に塩クラストが形成され、雨季には土湿が高くなるにも係わらず、乾季のアルベドは雨季に比し10&(アルベドで0.1)ほど低くなり、逆の傾向を与えている。この原因を究明するため、現地土壌による土層を用いて、種々の含水量に対する太陽反射率を野外実験的に調べた結果、表面の乾燥化、塩クラストの形成に伴うアルベドの減少特性を再現できず、今後他の要因についての検討が必要となった。 乾季での晴天日のアルベドの日変化はほぼ太陽高度角に対応していたが、ただその極小値が正午付近ではなく午前10時頃現れた。これは地表面乾燥化に因るものと考えられ、事実、ドーム式蒸発計による蒸発強度の測定値は日出と共に増大傾向を示し、10時頃急減していた状況に対応していた。 土壌水分は、個々の降水事象でアルベドが顕著に低下するように明瞭な影響が見られた。土壌塩分濃度に関しては、土壌採取日前の降水を考慮し補正を行うことで、アルベドに対して強い負の相関をもつことが確認できた。 2.地中の水蒸気移動 地中での水蒸気の挙動を調べるために、相対湿度20%、65%に設定した現地土壌(砂)層の表面を、湿度65%、20%に設定した外気に開放して実験を行った。その際、温度は25℃に固定している。その結果、砂層での水蒸気密度は(X/√t)を唯一の変数として相似的に変化した。しかし、各々の砂層内で生起する蒸発及び凝結の現象は、拡散的に輸送される水蒸気移動に対して顕著な遅延効果を与えることが分かった。
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