西オーストラリアの半乾燥地域の裸地で、2000年より3年間、蒸発-塩類集積の関係を調べるための気象・水文観測を実施した。本研究では、現地データの詳細な解析と共に、現地土壌等を用いた室内蒸発実験とその解析、さらには数値計算等を通して、当該の課題を考究したが、得られた結果は以下の通りである。 1.現地の地面直下に存在する土壌層での水分量や塩分量は、雨季での雨水浸透による土壌の湿潤化と乾季での蒸発による乾燥化を介して年周期的に変動し、それらは凡そ定常的であることが確認された。 2.現地の乾季では、大気の温湿度や日射の日変化により蒸発-凝結が地中で生起する。これを模擬した前年度の砂層実験の結果を詳細に解析した結果、水蒸気移動を拡散方程式で表した場合の修正拡散係数の構造が明らかになり、またその修正因子が100倍程度小さくなり、蒸発面や凝結面の移動の遅延の様子が明確になった。 3.浅い位置に常に地下水面を有する砂層の表面を、温湿度一定の大気に開放するという蒸発実験では、その表面に塩クラストが時間と共に形成される。実験中に撮影した砂層表面写真の解析より、クラストは実験開始後3〜5日程度までに全表面の約7割まで迅速に拡大し、その後は緩やかに増大していくことが分かったが、表面に一様には現れなかった。また、実験開始直後を除外すると、蒸発強度はクラスト面積の増大と共にほぼ直線的に減少したが、この低減はクラストの形成による水蒸気輸送抵抗の増大に因る影響が大きいと考えられた。 4.昨年度の観測データの解析により、地表でのイオンの入れ換え、あるいは相対濃度の変化が、アルベドを変化させていることが分かり、それを取り込んだ数値シミュレーションを予定したが、準備できたのは単純な溶存物質の輸送モデルであったので、正確な再現は困難であり、今後の課題として残った。
|