潜堤と人工リーフ施工事例の全国的調査結果より、開口部を有する人工リーフ群として用いた場合には、開口部の沖側で局所洗掘現象が発生している事が知られている。これは、開口部からの強い戻り流れによる定常流成分と沖からの入射波による波動成分の2つが合成された場所であり、局所洗掘による構造物の沈下等による効果の低下が懸念される為、適切な開口部の幅の設定が必要である。人工リーフ群設置後の開口部周辺の地形変化量を予測して適切な開口幅および端部処理を提案する事を目的として、本研究の検討項目を以下に列記する。1)現地の地形変化および波浪諸元の特性の調査、2)拡張型の強非線形Boussinesq方程式を用いた開口部周辺の水位と底面流速の時系列変化の算出、3)開口部幅と底面流速(最大および平均流速)の関係、4)底面流速を定常流と波動成分に分離してそれぞれのせん断力評価モデルの提案、5)現地の再現性の検討、6)開口部幅と端部処理の決定、の6項目である。平成15年度は1-5)について検討した。1)は太平洋側海岸から1箇所、日本海側から2箇所を選び、設置前後に実施された深浅測量図と波浪データを用いて、侵食域の発生位置と大きさ等と観測期間中の波向の出現状況との相関を調べた。2)は水位と底面流速に関する水理模型実験による数値計算の再現性の検証を行った。砕波に関する渦動粘性係数のパラメータを修正する事で、砕波に伴う高周波成分の再現性は不十分であるもの、開口部から沖に向かう戻り流れとリーフ端部における循環流は再現され、波高および底面流速の時間変化をほぼ再現できた。3)は日本海側に設置された人工リーフ群における開口部幅を様々変化させてその周辺の底面流速を時系列変化で算出し、平均流速と最大流速と開口幅との関係を整理した。堤長と開口部幅の比を3〜5に変化させて、開口部中央での底面流速を求めた結果、平均流速は開口部幅が狭い程ストークス式による質量輸送速度に近くなった、4)〜5)は、移動床実験を用いて地形変化計算と比較した。定常流のみの場合と分離した場合では、底面せん断力を定常流成分と非正弦的波動成分の合成として取り扱う計算ケースの漂砂モデルが最も再現性が良い事が確かめられた。5)は、1)で整理した水深と波浪を用い、年間最大有義波と季節別最多出現波向を修正して、開口部沖側に発生していたすり鉢状の侵食場所と大きさを再現する事ができた。
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