研究概要 |
高齢者や障がい者の交通需要の潜在化は,これらの人々の心身機能や経済状態等の個人特性に対して,バスや鉄道,タクシー等の交通手段の車両構造や運行システム等の交通環境の不整合がもたらすものである。この不整合は交通環境にとどまらず,都市施設の配置等,交通を含めた都市システム全体の問題としてとらえる必要がある。本研究では,このような不整合に関して,バス,鉄道,タクシー等の公共交通の利用実態から,高齢者や障がい者がおかれている困難な状況を把握し,それぞれの地域に求められる交通が保持すべき機能を明らかにするとともに,求められる機能を達成するための今後の公共交通の運営方式について,代替案の作成を行った。代替案の実現可能性については,平成16年度の研究において,法制度等を含めて詳細に検討する予定である。都市システム全体の問題については,高齢者・障がい者の都心居住等によるコンパクトシティの実現によって,交通抵抗を軽減することが交通需要を顕在化を容易にする可能性がある一方で,利便性の高い都心の居住が,高齢者・障がい者の人々とのコミュニケーションを減少させる恐れがあることから,都心居住の可能性と課題について検討した。とくに都心地区におけるバリアフリー空間の必要性,さらには高齢者や障がい者の交流空間のあり方についても明らかにすることができた。さらに交通需要の顕在化のための環境として,地域における人々のコミュニケーションを保持し,つつ,高齢者・障がい者の地域活動に関する参画状況について明らかにした。
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