都市圏域レベルの交通・土地利用シミュレーションモデルの開発を行った。特に今年度は広域的な土地利用の変動に対応し、都市内の交通流が変化するモデルを構築し、各施策を実施した際の環境評価値の推計をおこなった。 まず、モデル構築においては次の3つのステップをとった。 1.PTデータおよび道路交通センサスをもとに手段別OD表を作成した。 2.デジタル地図、道路地図をもとに県道以上の道路ネットワークを構築した。 3.交通需要推計モデルを構築し、交通配分シミュレーションを行った。 また、具体的な都市政策として都心部活性化、公共交通指向型開発、郊外開発の効果推計を行なった結果、以下のような知見を得ることが出来た。 ・都心部活性化策が環境負荷削減に与える効果は今回の3施策の中で最も高い。郊外部の土地利用を抑制し、都心居住を推進することは極めて有効的な施策である。 ・新交通システム(LRT)の導入効果と公共交通指向型開発(TOD)が環境負荷削減に与える効果を推定したところ、一定の削減成果を確認することができた。ただし、土地利用誘導では都心部からの転移が予想され、環境負荷削減効果を低減させる為、注意が必要である。 ・高速道路インターチェンジ周辺の郊外開発は、環境負荷削減を目的にした場合に最も効果の少ない施策であることが分かった。これは自動車依存度が依然として高まるため、徒歩やバスといったより環境にやさしい交通手段への転換が見込めないためである。 なお、本研究計画の当初に予想した容積率上限との関係であるが、対象とした宇都宮では概して低容積率であり、土地利用を積極的に誘導する効果が少ないことがわかった。今後の研究計画においては容積率制度だけでなく、総合的に施策を検討する予定である。
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