本研究は、休日は労働の制約がなく自由にアクティビティ選択が出来るため、短縮時間には個人が行いたいアクティビティが充てられるという考えのもと、アクティビティに着目した休日の時間価値の推定方法を体系的に開発することを目的としている。 まず、個人の休日アクティビティに対する効用関数を定義し、その推定方法を提案した。推定には、休日1日のアクティビティダイアリーと、仮想的に自由時間が追加された時のアクティビティ選択データを用いる。そして、それぞれのデータに対応するモデルとして、効用最大化仮説に基づくタイムアロケーションモデルと、効用最大化時にアクティビティの限界効用が異なることに着目したアクティビティ選択モデルを導出した。これらのモデルは同じ誤差項を仮定していることより、2つのモデルの対数尤度を足し合わせた新たな尤度関数から最尤推定によりパラメータを推定する同時推定法、及び、共通な未知パラメータに着目して、パラメータが収束するまで交互に計算を繰り返す二段反復法を提案した。そして、アクティビティの活動時間と活動費用の限界代替率の比によって休日アクティビティの時間価値を定義し、その算出式を提示した。 次に、実際これらの方法から時間価値を算出する時の問題点、パラメータ推定方法の特徴を明らかにするため、モンテカルロ法による仮想データを作成して、数値実験を行った。パラメータ推定では、同時推定法は二段反復法に比べて安定した推定値が得られるものの、初期値により局所解におちいることや、収束しなくなること、一方、二段反復法は初期値に依存せず推定できるが誤差項の標準偏差の推定精度が悪いことがわかった。一方、算出される時間価値については、アクティビティ、個人属性により異なった値を持つこと、2つの推定方法のどちらを用いても時間価値の推定精度に大きな差がないことがわかった。
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